お知らせ

2018年07月30日

読書の素晴らしさ

故・遠藤周作さんの「沈黙」という小説、サラッと読んだことはありましたが最近また新たに購入して熟読しました。

ここ千年以上この星の人間の営みを大きく左右してきた「宗教」というものがテーマです。

 

簡略に言うと、宗教が持つ性質である「自分以外の誰か(神)が、窮地に陥った正しい自分をこの世なりあの世なりで救ってくれるはずだ」という部分に鋭く切り込んだ作品です。

 

私の勝手な感想を書きますと、人間を家畜か家畜以下に扱って搾取している一部の人を除いては、「死に際か死んだ後に自分は報われるはずだ」と信じたくもなる生活を、いつでもどこでも皆が強いられてきたのがこの文明の特徴であり、それを「文明」と呼んでいること自体がおかしい… そんな自分の高校生頃の感覚が蘇りました。

 

しかし最も異なる点は「強く憤った未成年の若者であった頃と違って、今は感情がかき乱されることがない」というところ。それは、何十年も自分がしみじみ体験させられてきたことからも「わかりきった事である感」と、何よりも未熟な未成年だったが故に「自分ではどうすることもできない」と決め付けていた人間社会のあり方が、今では「少しずつだが変えることができる」という感覚になっていることです。

 

今時ならば異性を相手にする客商売やギャンブルみたいなもので、宗教のおかげで一時的に人々が実際に希望を抱いた部分もあったことでしょう。肉体死後に報われたのかどうかについては原則誰も答えられない、というのがこの文明最大の特徴ですが!笑

 

本を読むことすらない人々が増え続けている今の世の中ですが、筆者の感性や知性が見事に映し出される「書籍」とは、改めて素晴らしいものだと私は感じ入っています。

お読みになった方もいらっしゃるでしょうが、皆さんはいかがお感じでしょう。