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「今ここにある自分」と「今ここにいない自分」
2016年11月27日

「今ここにある自分」と「今ここにいない自分」

八月中旬、私の肉体は脳幹出血による意識不明の重体に陥っていましたが、その間、非物質の私は言葉では上手く説明できない意識世界を旅していました。そこには時空の制限がないため、複数の自分があらゆる地域に同時存在しており、過去形・現在形・未来形の言語では表すことのできない、時間という概念が通じない世界だったのです。そこでも肉体や物質が実在しているというリアルな感覚があったのですが、時空制限のあるこっちの肉体物質世界に再び意識が戻ってきた後、こちら側の視点からすれば、あちら側は非物質世界です。言語をはじめとするツールでコミュニケーションを取っているこっちの世界に意識の重点を戻した今の状態でも思うところが多々あり、今日はその一部でしかありませんが表現を試みようと思います。

「幸せの秘訣は自分と他人とを比較しないこと」というような言葉、よく聞きますよね。これは前提として大切なことです。人の幸せのカタチは実に様々です。競争社会に埋没して生きている人には酷な話ですが、他人との比較が自分の人生に真の幸せをもたらすことなど、ほぼありませんでしょうから。

ところが「ありのままの今の自分」に対して「ピーク時の過去の自分」「希望的観測で想定していたはずの今の自分」との比較は、皆さん無意識的に結構やってしまっているものなのです。
 これではせっかく他人との比較をやめてハッピーなるはずの自分が、相変わらず「自分はダメだなぁ…」というようなネガティブ思考に囚われ続けることになってしまいかねません。

これを振り切るコツは、直線的時系列に縛られた思考をしないことです。「今を生きる」等の言葉もよく目にすると思いますが、そこには簡単でない時間概念の転換が含まれているのです。

 皆さんが「自分」を定義する場合、一般常識的には過去の記憶から引っ張り出してきた材料を総括して「よって自分はこんな人間である」と考えるのが普通でしょう。つまり「過去の自分」が「今の自分」であると錯覚しているのが一般常識的な自己定義です。実際、社会ではそれを求められ、応じる必要がある場面も多々あることでしょう。いわゆる学歴や資格などの肩書きにはじまり、諸々の成功体験、失敗体験、好き嫌い、得意なこと、苦手なこと、トラウマ、思い込み、勘違い…等々、誰だっていろいろありますが、作用した感情フィルターによってそれぞれの印象に濃淡があって当然でして、故に周りからすれば「それは偏りすぎているのでは?」という具合で、自慢でも自虐でも、過去の特定の何かに囚われた自己像を固持している方がたくさんいらっしゃいます。

反対に、明日でも来週でも来月でも来年でも老後でも、未来に起こるかもしれない何かを心配しすぎてはいませんか? あるいは妄想だけ逞しくしていながら、そこへの到達には必要だと判っているにもかかわらず怠っている何かはありませんか?

 常に「今この瞬間に意識をフォーカスする」という生き方を邪魔するのは、他人だけではなく、過去の自分、未来を想定している自分の概念だったりもするということです。即ち直線時間に基づく概念は「今ここ」に意識を集中させることを難しくしています。犬や猫などのペット、人間でも赤ちゃんを見ていれば解りますが、昨日を悔やむことも明日を心配することもなく、常に今を生きていて無邪気そのものです。だからといって私は「時系列を無視しろ」と言っているわけではありません。それでは社会人一般として生活して行けなくなってしまいます。

今の瞬間だけに生きる… それは時間の存在しない意識世界に足を踏み入れることを意味します。少なくとも子供の頃には誰にでもあったであろう「時の経つのも忘れて…」という状態です。偶然にせよ意図したにせよ、その境地に達した人は「社会不適合者、病人」等の扱いを受けているケースも多いため、社会常識である直線時間概念とのきちんとした使い分けが必須だと思うのです。

私は意識不明状態を彷徨った末に肉体の意識が戻ってからも、痺れてばかりの全身が痛くてほぼ動かせない…にもかかわらず、倒れる前の身体と比較してあれこれ考えることはせず、将来を憂慮するような余裕すらなかったため、常に今の状態から少しでも良くするため目の前のリハビリに全力を尽くすことに集中できました。「かつてはああだったのに…」「今頃はこうしてるはずだったのに…」といった「今ここ」ではない自分に意識を奪われることなく「ありのままの今」に集中してきた数ヶ月の累積結果として、一時はベッドから車椅子までの移動に難儀していた自分の身体であったのが、歩いて新幹線移動して人前で話ができるところまで回復できたのです。

どれがホンモノの自分でどれがニセモノの自分というわけでもないのですが、昔から「己自身こそが最大の敵」なんて言われるだけあって、なかなか一筋縄では行かない「今を生きる」の話でした。

まだまだお伝えしたいことは沢山ありますので、続きはまた後日に。
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石井数俊